トリログ!

クルマとバイク、ときどき自転車

さよならトリッカー

※別れの悲しさのままに書いてます。女々しい文が続きますのでご了承ください。



まさかこんな日が来るなんて思いもしなかった。
トリッカー、僕にとっては非の打ち所がないほどよくできたバイクであり、気に入っていた。


別れに決定的な理由があれば、どれだけ楽だっただろう。
大型に乗り換える、なんていう前向きな理由、いや、今となっては事故で廃車でも良い。自分の意志で別れを選んだとはいえ、まだまだ手元に置いておけるバイクを手放すのがこんなに悲しいとは。


この1年、大きく体調を崩したこともあって、トリッカーに乗る機会もかなり少なくなっていた。それでもトリッカーを手放せなかったのは、これといった趣味も無く真っ白だった自分に、色を与えてくれたのがバイクだからだと思う。それ以前の自分はどんな人間だったのか、もう今では思い出せないほど、バイクは人生を豊かにしてくれた。バイクと出会ったことで、ようやく僕は自分という人間を表せるようになったと思っている。



ただ、それほどの存在だったがゆえに、乗る機会が減ってゆくにつれて、自分という人間の色が薄まってしまうような想いもあった。それに抗うように、今年は大型二輪の免許も取った。トリッカーに対しても、エアクリーナーやプラグ、バッテリーにチェーンも交換した。まだまだ乗ってやるぞと言わんばかりに。埼玉から大阪に引越した時も、わざわざお金をかけて運んできた。


しかし手をかければかけるほど、ほとんど乗っていないという現実が襲い掛かってくる。もしかすると体調のせいではなく、バイクへの情熱までもが失われてしまったのかもしれない。それを認めたくないがゆえに苦しむ。気が付くと、楽しかったはずのバイクに縛り付けられていた。強いて言うとすれば、これがトリッカーを手放すことにした理由。



手放すことに決めた時点で、トリッカーには1ヶ月くらい乗っていなかったが、1度でも乗ってしまうともう手放せなくなってしまう。だから乗らなかった。気持ちが揺れてしまわないように、手放すまでSNSにも書かなかった。


ネットで査定依頼をして、業者が何社か来て、買い取られていくまで、あっという間だった。
ずいぶん長く乗っていなかったのに、査定の時はセル1発でエンジンがかかってくれた。久しぶりに聞いたエンジン音。おまえ、普段はエンジンのかかり悪かったのになぁ。ちょっと泣きそうだった。

僕のトリッカーが業者のトラックに載せられて、走り去ってゆく。
今はもう写真しか手元に残っていない。

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さよならいわずに 笑ってみるわ
あなたの旅立ちだもの 泣いたりしない

私は泣かない だってあなたの
あなたの思い出だけは 消えたりしない